Eine wienerische Maskerad' - und weiter nichts?

Oper, Wiener Walzer, ein bisschen Symphonie, usw.

#今聴きたい歌手50選 第4回 ~ヒーラ=ファヒマ~

 ついに梅雨入りし、じめじめと蒸し暑い天気が続く季節になった。今夜は近所の行きつけのラーメン屋にラーメンを食べに行って、ついでにコンビニで久々にビールを買って、今飲んでいる。この一連の散歩だけで汗が滲むような季節なのである。夏はもうすぐそこだ。ただ、泳ぐ機会がない以上、夏が来たという実感は全くない。家でストリーミングを観ながら紅茶を飲み、レポートをするだけの生活では、季節感がないのは当たり前といえばそれまでかもしれない。

 さて、今はというと先日購入したCDを聴いている。サヴァリッシュ指揮、バイエルン国立歌劇場1978年ライブのモーツァルト:《コジ・ファン・トゥッテ》である。なかなか配役は豪華で、マーガレット=プライスのフィオルディリージ、ファスベンダーのドラベッラ、シュライアーのフェルランド、ブレンデルのグリエルモ、グリストのデスピーナ、そしてアダムのドン・アルフォンソという万全の布陣である。やはりシュライアーはモーツァルトがすごくよく似合うテノールだなあ…なんて思いながら聴いている。

 

 さて、今日も今日とて、オペラ歌手の紹介をしていこうと思う。この歌手を紹介するのは、間違いなく明後日16日のウィーン国立歌劇場の《仮面舞踏会》のストリーミングを意識したものであり、この公演のCDを好んで聴いている自分としては、この《仮面舞踏会》のストリーミングはぜひ皆様に聴いていただきたい、観ていただきたいものなのだ。

 

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ヒーラ=ファヒマ(夜の女王、魔笛)。ウィーン国立歌劇場(2017年12月)。*1

 ヒーラ=ファヒマ(1987-、イスラエル

 私の推しのコロラトゥーラ・ソプラノである。もうTwitterでは何度も取り上げているし、ブログで取り上げたこともあると思うので、名前だけでも聞いたことある方も多いはずだ。ウィーン国立歌劇場を中心に活躍している、気鋭のコロラトゥーラである。ガリフッリーナのような硬く絞られるような声ではなく、どちらかというと平たい感じの、柔らかく暖かみのある声だと思う。音を完璧に余裕を持って当てていく。決して声量があるというわけではないが、聴いたらすぐにそれとわかる独特な声。少なめのビブラート(決してないわけではない)を使い、声を微妙に揺らす。オブラートに包まれたような品のある、落ち着きを持った歌声だが、発音は明晰で、何を言っているかわからないなどということはない。今聴いているグリストの声にほのかに柔らかさを与えるようなイメージだろうか。(とにかく言ってしまえば声が可愛いのである(蛇足)。)

 そんな彼女の当たり役はムゼッタ(ボエーム)やオスカル(仮面舞踏会)、ナンネッタ(ファルスタッフ)、フィアカーミリ(アラベラ)、ツェルビネッタ(ナクソス島のアリアドネ)、ソフィー(ウェルテル)といったところだろうか。夜の女王(魔笛)も聴いたが、彼女の柔らかな声は少しイメージとは異なっている気がした。あどけなさ、いじらしさ、そして可憐さ…そういったものが似つかわしい役がどちらかというと彼女には似合っていると思う。中でもオスカル(仮面舞踏会)は、ウィーン国立歌劇場150周年記念ボックスに含まれていた《仮面舞踏会》のCD(実はこの公演こそ明後日16日のストリーミングで公開される映像なのだ)で何度も聴き、その小姓としてのあどけなさを前面に出した歌唱は随一のものだった。《仮面舞踏会》は私のお気に入りのヴェルディのオペラのひとつだが、なかなかオスカルはこれという人がいなかった。あえて選ぶならグリストかなというところにこのCDを聴いた。私はオスカルの第1声 "S'avanza il re" を聴いた瞬間にこのコロラトゥーラに惚れた。以降、ファヒマのオスカルは何度も聴いたが、すぐに本人だと分かる声だし、どんどん彼女の歌声に夢中になった。私が今いちばん聴きたい歌手のひとりだ。

 彼女の歌声は可憐だが仄かな陰影があり、柔らかく暖かみがある。一度聴いたら忘れられなくなるような美しい声(と姿)である。ぜひ皆様にも聴いていただきたい。

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 プッチーニ:歌劇《ボエーム》第2幕よりムゼッタのアリア《私が街を歩けば》(ムゼッタのワルツ)

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 ヴェルディ:歌劇《ファルスタッフ》第3幕より ナンネッタのアリア《季節風の息に乗って》

 彼女の声を聴いているとますます、彼女にはぜひゾフィーばらの騎士)を歌ってほしいなあ…なんて思ってしまう。ファヒマのレパートリーは同じく期待の若手である、エリン=モーリーやダニエラ=ファリーと被っているところが多いし…是非機会があれば聴いてみたいものだ。

 ファヒマはウィーン国立歌劇場の16日のヴェルディ:《仮面舞踏会》のストリーミングで、先に書いたオスカルを聴くことができる。また、ウィーン国立歌劇場のコンサートシリーズ(ライブ)にも勿論登場、20日、25日、28日(いずれも午前2時30分から)にその美声を披露してくれる。そして、7月1日はウィーン国立歌劇場から《ファルスタッフ》が配信され、彼女のナンネッタを聴くことができる。*2

 やはり最近いちばんの推しの歌手となると長くなってしまった。ぜひぜひ、皆様にも聴いていただきたい。そして、感想をぜひ伺いたいと思う。まずは16日のウィーン国立歌劇場の《仮面舞踏会》から。

 

ウィーン国立歌劇場のストリーミングはこちらから入れます。アカウントの作成をすれば、今は無料で見られます。

Wiener Staatsoper


 それでは今日はこの辺で。

#今聴きたい歌手50選 第3回 ~ベンヤミン=ブルンズ & イリーナ=ルング~

 何だかんだ計画を立てながら課題やレポートを処理できている今日この頃である。しかし、眠いものは眠いのである。ヒョウモンチョウのように夏眠をしてしまいたいとふと思う時もある。かつてのように朝早く起きて、計画的に運動して、たくさん食べて、疲れて、寝るという生活はもう戻ってこないのだろうか…。おかげで、自粛期間に入ってから、すべてが省エネ生活なのである。演奏会に行ければなあ…などと思うこともある。ただ、今はストリーミングを観ながら、耐え忍ぶしかないのだ。

 

 昨日6月9日は大好きなソプラノ、イレアナ=コトルバスの誕生日だった。昨日はバイトなどもあって、なかなか時間が取れず、コトルバスの歌声を聴く暇などあまりなかったのだが、今日は時間があるので、朝からクライバー指揮、バイエルン国立歌劇場の《椿姫》の有名な盤から始め、ジュリーニ指揮、ウィーンフィルの《リゴレット》、そして今はカラヤン指揮、ウィーン国立歌劇場の《フィガロの結婚》の1977年ライブを聴いている。瑞々しさと陰影、可憐さと儚さを備えたソプラノで、ヴィオレッタ(椿姫)やミミ(ボエーム)、スザンナ(フィガロの結婚)、ジルダ(リゴレット)など、幅広く安定した当たり役を持っていた。私が聴くきっかけとなったのはクライバー盤の《椿姫》で、クライバーを聴こうと思って買ったのに、気づいたらコトルバスのヴィオレッタに惹かれていた。

 

 コトルバスを聴きながらではあるが、今日もまた、オペラ歌手の紹介をメインにやっていきたいと思う。

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ベンヤミン=ブルンズ(左、ドン・オッターヴィオ)、イリーナ=ルング(ドンナ・アンナ)。ウィーン国立歌劇場でのモーツァルト:《ドン・ジョヴァンニ》(2017年1月)。*1

  ベンヤミン=ブルンズ(1980-、ドイツ)

 ハノーファー出身のテノール。とにかく高音が良く伸びる印象がある。滑らかな歌いまわしと突き抜けるようなフォルテ、とにかく繊細なピアノをもっており、モーツァルトを得意としている歌手。ウィーン国立歌劇場のストリーミングで聴いたドン・オッターヴィオドン・ジョヴァンニ)は絶品で、軽さと発声の滑らかさ、伸びやかで解放感ある歌唱が魅力的だった。でも、何となく聴いたことあるような声だと思っていたら、実はウィーン国立歌劇場で実演に触れた、ウィーン1001回目の《ばらの騎士》の公演でイタリア人テノール役で出演していたことを後から知った。*2 確かに特に中音域から高音域までの充実感が素晴らしく、オックスには机をたたいてほしくなかったなあ…なんて思うほど、惚れ惚れするような美声だった。

 このテノール、やはり当たり役はドン・オッターヴィオドン・ジョヴァンニ)とタミーノ(魔笛)だと思う。現代を代表するモーツァルト歌いとして、今後の活躍も楽しみな歌手である。

 というわけで、今日は彼のモーツァルトを聴いていただきたい。

youtu.be モーツァルト:歌劇《魔笛》第1幕より タミーノのアリア《この美しい絵姿》

 

 イリーナ=ルング(1980-、ロシア)

 そして、今日はもうひとり、ご紹介したい。先ほどの写真のドンナ・アンナ役のソプラノ、イリーナ=ルングである。

 線の細いコロラトゥーラながら、声量があり、ドラマティックに歌うこともできる歌手。2003年から2005年までスカラ座アカデミー所属で、プラシド=ドミンゴのオペラリアで受賞歴があり、そこからヨーロッパで活躍をしている。*3 ウィーン国立歌劇場にはヴィオレッタ(椿姫)でデビュー後、ドンナ・アンナ(ドン・ジョヴァンニ)、エレットラ(イドメネオ)、ミミ(ボエーム)など、いずれも彼女の当たり役を歌い、評価されている。*4 少し曇り気味ではあるが、中音域がとりわけ充実している印象で、それを土台に、やや線は細いながら高音域に伸びやかに声を当てていく印象がある。彼女の最大の当たり役はヴィオレッタ(椿姫)とミミ(ボエーム)だと私は思う。ウィーン国立歌劇場のストリーミングで以前見たヴィオレッタ(椿姫)は、特に第2幕第1場のジェルモン(これがドミンゴだった)との二重唱での感情表現の豊かさに惹かれた。

 というわけで、彼女の歌声も聴いていただきたい。

youtu.beモーツァルト:歌劇《イドメネオ》第3幕より エレットラのアリア《我が弟オレステよ、私の魂を受けとめておくれ、地獄の中で》

 ルングは来シーズン、2020年11月、グノーの《ロメオとジュリエット》のジュリエット役を歌う予定である。エヴリーノ=ピドの指揮、ロメオ役には超高音を得意としているアメリカ人テノール、マイケル=スパイレスが予定されている。非常に楽しみな組み合わせである。*5

 

 それでは今日はこの辺で。

 

#今聴きたい歌手50選 第2回 ~エレーナ=ツィトコーワ~

 だんだんと気温も上がり、夏らしくなってきた。今朝は早く起き(というより寝られなかった)、朝はヨーゼフ=ランナーの作品集を2つの盤で、アンサンブルで聴いた。この作曲家はウィンナ・ワルツ作曲家の中ではいかんせん知名度があまり高くないのだが、弦の流れるようなフレーズが美しく、気品があり、アンサンブルにすると大変映える作品が多い。今朝は、そんなランナーの作品を、ウィーン・ランナー・アンサンブルとウィーン交響楽団のメンバーによるシュトラウス・アンサンブルのふたつのアンサンブルで聴いた。

 そしてランナーのワルツを聴きながらドイツ語を読んだ後、久しぶりに目の前の海浜公園に自転車で行き、日光浴をした。太陽光を意識して浴びたのは久しぶりで、ポカポカとして気持ちよかった。その後は近所のドイツ・パンの店でイートインし、午前中はゆっくり過ごした。(コーヒーを飲みすぎて、おなか緩くなった)

 

 そんなときに、今日のウィーン国立歌劇場のストリーミングは《アドリアーナ=ルクヴルール》であると知った。チレアによる美しいオペラである。2014年の公演で、タイトルロールにアンジェラ=ゲオルギュー、マウリツィオ役にマッシモ=ジョルダーノという配役。しかし、忘れてはならない。ブイヨン公妃役がエレーナ=ツィトーコワという、推しのメゾソプラノのひとりなのである。

 

 というわけで、今日のブログでは彼女を紹介したい。

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エレーナ=ツィトコーワ(ブイヨン公妃、アドリアーナ=ルクヴルール)。ウィーン国立歌劇場(2017年11月)。*1

  エレーナ=ツィトコーワ(1972‐、ロシア)

 私がこのメゾソプラノを知ったのはそれこそウィーン国立歌劇場のストリーミングでかつてあったヴェルディの《ドン・カルロ》のエボリ役で、その迫力満点の歌唱にはひたすら驚かされたものである。彼女の魅力は、やはり声の勢いと声量に頼りすぎない、余裕を持った発声にあると思う。直線的であまりビブラートがかからない、突き抜けるような声で、それはそれはエボリ向きな声だと少し聴いただけで分かるほどの、とても魅力的なメゾソプラノである。しかし、ただ突き抜けるだけではなく、輪郭に絶妙な柔らかさを持った、気品のある声。彼女の声は今回のブイヨン公妃(アドリアーナ=ルクヴルール)やエボリ(ドン・カルロ)のような高貴な役は勿論、ケルビーノ(フィガロの結婚)やオクタヴィアン(ばらの騎士)のようなズボン役にぴったりだと思う。

 そのレパートリーはヴェルディだけにとどまらず、今回のブイヨン公妃(アドリアーナ=ルクヴルール)など他のイタリア・オペラやシャルロッテ(ウェルテル)などのフランスもの、ケルビーノ(フィガロの結婚)やドラベッラ(コジ・ファン・トゥッテ)などモーツァルト、オルトルート(ローエングリン)やブランゲーネ(トリスタンとイゾルデ)などのワーグナー、オクタヴィアン(ばらの騎士)、さらには外国の王女(ルサルカ)、オリガ(エフゲニー=オネーギン)にいたるまで、幅広く歌うことができるのも魅力である。*2

 このメゾソプラノは今のうちにぜひ聴いていただきたい歌手のひとりである。少し聴いていただきたいので、前回と同様に、動画を紹介したい。

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  マスネ:歌劇《ウェルテル》第3幕より シャルロッテのアリア《ウェルテル!私の心にウェルテルがいると誰が想像できたかしら》

 アグネス=バルツァに似た雰囲気を感じさせる声かもしれない。ふと思っただけなので、後から別の感想を抱くかもしれないが…。

 ツィトコーワの次のウィーン国立歌劇場への登場は2021年1月のドヴォルザークの《ルサルカ》の外国の王女役である。この公演もまたキャストが非常に豪華で、ルサルカにクリスティーネ=オポライス、王子役に、この役を当たり役のひとつとしている宮廷歌手ピョートル=ベチャワが登場する。特にベチャワの王子役については、ウェルザー=メスト指揮、クリーブランド管、ザルツブルク音楽祭2008年ライブの公演で、その役との相性の良さが伺える。*3

 

  意外とツィトコーワを推せたところで、今日の歌手紹介を終えたいと思う。図らずも2日連続でロシアのオペラ歌手になった。Twitterでもお話しした通り、この #今聴きたい歌手50選に関しては、若手を基本的に紹介しつつ、ところどころ、現在脂の乗っている推しの歌手を挟んでいきたいと考えている。今回のツィトコーワも、現在乗りに乗っている、私の推しの歌手だと思っていただきたい。

 それでは今日はこの辺で失礼したいと思う。

 

*6月12日追記(訂正)

 Twitterのフォロワー様よりご指摘いただき、確認したところ、以下の誤りがありましたので、該当箇所をすべて訂正いたしました。申し訳ございませんでした。

(誤)「ツィトーコワ」

(正)「ツィトコーワ

 

#今聴きたい歌手50選 第1回 ~アイーダ=ガリフッリーナ~

 生活リズムが一周回って朝型になってしまった。というのは、一昨日の晩全く寝付けず、結果的に諦めて早朝からウィーン国立歌劇場の《エレクトラ》のストリーミングを見た結果、寝不足と極度の疲労からその日は17時就寝、翌朝5時起きを決めてしまったからであった。とはいえ、朝型になるというのはよいことで、今後も続けていきたいと思う。今日もこのブログを投稿したらさっさと寝てしまうつもりである。もちろんSNSなどを今夜は見ることはないと思う(笑)。

 

 さて、先日Twitterで予告していた #今聴きたい歌手50選 を始めていきたいと思う。簡単に説明すると、最近ストリーミングなどで今を時めく歌手に注目する機会が増えたが、そういった歌手の中で「私が」聴きたい歌手を、私の主観から適当な雑談として適当に語るだけのコーナーである。しかも、とりあえずはブログ1本で1人の予定だが、この重さで完遂できる気はしないので、ご了承願いたい。

 

 というわけで、さっそく今日の歌手を紹介していきたい。選んだ歌手にやけにソプラノが多かったので、今日はこのソプラノから。初めは比較的有名どころから攻めていきたいと思う。

 

 

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アイーダガリフッリーナ(アディーナ、愛の妙薬)。ウィーン国立歌劇場(2018年10月)。*1


 アイーダガリフッリーナ(1987-、ロシア)

 まずはこのソプラノから。プラシド=ドミンゴの「オペラリア」で優勝し、ウィーン国立歌劇場に招かれたソプラノのひとりである。*2 ガリフッリーナの声は硬質だが耳当たりがよい。ビブラートで柔らかくふくよかな美声というよりは、その対極にある感じがする。具体的に言うと、硬質で、密度が高く、弾丸のような芯のある美声である。線は細く、ころころと金属の球を転がすようであり、クリーミーな声でもある。

 ビブラートは少なめで、コロラトゥーラの役を得意にしている印象がある。具体的に言うと、ヴィオレッタ(椿姫)、ミミ、ムゼッタ(ボエーム)、ノルマ、そして何と言ってもジュリエット(ロメオとジュリエット)、アディーナ(愛の妙薬)、そしてジルダ(リゴレット)などである。

 

 実際に聴いていただきたいので、次のふたつの動画を紹介したい。

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グノー:歌劇《ロメオとジュリエット》第1幕より ジュリエットのアリア《私は夢に生きたい》

 

youtu.beベッリーニ:歌劇《ノルマ》第1幕より ノルマのアリア《清らかな神よ》

 

 ガリフッリーナはとりわけウィーン国立歌劇場のストリーミングでよく見たソプラノである。ドミンゴ指揮のグノー:《ロメオとジュリエット》のジュリエット役が、とりわけ印象深く残っている。この時はロメオをフアン=ディエゴ=フローレスが演じ、こちらともバランスの取れた、最高のコンビネーションだった。ふたりとも超高音が得意なだけあって、高音の伸びが秀逸で、二重唱などは本当に聴きごたえがあった。

 また、ガリフッリーナといえばドニゼッティの《愛の妙薬》でのアディーナ役も外せない。ウィーン国立歌劇場のストリーミングまではあまりよく知らないオペラのひとつではあったが、久しぶりにまじめに聴いたのがこのガリフッリーナだった。やはり素晴らしい。こちらのネモリーノ役はベンジャミン=ベルネームで、このテノールも期待の若手である。持ち前のころころとした独特な美声が、アディーナの性格と相まって、非常によくあっていた。

  ウィーン国立歌劇場オーパンバルにも登場している。2020年にはピョートル=ベチャワとともに出演し、その美声を披露した。今後もウィーン国立歌劇場でも活躍が期待されているソプラノのひとりである。

 ウィーン国立歌劇場では、この9月から10月にミミ(ボエーム)を歌う予定。ロドルフォには1990年生まれの気鋭の中国人テノール、ジンシュ=シャホウが登場。マルチェッロはウィーン国立歌劇場との関係が深く、宮廷歌手でもあるバリトンアドリアン=エレートが予定されている。こちらも配役が豪華で、かなりできる公演である。

 

 ガリフッリーナの公式ホームページはこちらから。

aidagarifullina.net

 

 さて、やはり思ったよりも書けないのは私の実力と経験不足なのか…。これから精進していきたいと思う。期待している(特に若手の)歌手は非常に多いので、これからもずっと楽しみである。かつての名歌手(カプッチルリとかカプッチルリとかカプッチルリとか…(笑))に思いをはせるのももちろん大事なことだが、こういう最近の歌手を知る機会をストリーミングが提供してくれるので、これからも見ていきたいし、コロナ禍以後の来日公演や現地での公演を楽しみにしながら、充実した時を過ごせると思う。

 

 それでは今日はこの辺で。



 

カミッラ=ニールンドのR. シュトラウス

 新型コロナウイルスの感染拡大はひと段落したかと思えば、どうやら各所で第2波がやってきたように思える。大学もオンライン講義が続いており、部活もできそうにない。コンサートもこれまでに17公演が中止や延期で消え、これから先もどうなるかわからない。これではますますストリーミング漬けの生活に拍車がかかるだけである。学校の勉強もしなくてはいけない。論文を読み、レポートを書き、勉強もしていかなくてはならない。ますます計画を立てることの大事さを痛感させられるのである。

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カミッラ=ニールンド(皇后、影のない女)。ウィーン国立歌劇場での新演出プレミエ(2019年5月)。ウィーン国立歌劇場150周年記念公演。*1

 さて、先日からカミッラ=ニールンドというソプラノに魅了され続けている。最初はベルリンフィルのデジタルコンサートホールで聴いたノセダ指揮のR. シュトラウスの《4つの最後の歌》から始まった。たまたまチャイコフスキー4番が聴きたくなって聴いたコンサートの前プロだっただけ…のつもりだった。そもそも《ばらの騎士》をフルスコアで購入してしまうぐらいに好きになっていたはずだが、R. シュトラウスという作曲家には疎いのである。つい昨年までR. シュトラウスはほとんど聴いていなかったし、思い立ったように《ばらの騎士》を聴き始めたのもウィーン遠征のためだったのである。しかし、帰国してどんどんはまっていった。とはいえ、まだまだ交響詩にすらろくに手を出せていないし、オペラについてもまだまだなのである。

 そういう段階で、先日ベルリンフィルで初めて《4つの最後の歌》を聴いた。《カプリッチョ》を思わせる美しい音楽にうっとりするとともに、ニールンドの柔らかくも奥行きのある、気品に満ちた声には感動させられた。しかし、そこでニールンドという歌手に注目し始めたわけではなく、ウィーン国立歌劇場のストリーミングがあったからこそ、ニールンドを何度も聴くことができ、このソプラノの素晴らしさを体感させられた。

 彼女のマルシャリン(ばらの騎士)はいまだに聴けていないので明言は控えたいが、彼女はシュトラウス・プリマとしては現代随一のソプラノではないだろうか…。とりわけ感動したのが《カプリッチョ》のマドレーヌ役だった。フランス貴族らしさを前面に押し出すのではなく、控えめではあるけれど存在感を出す、彼女の歌いまわしは聴いていて実に心地よいものだった。声質は勿論違うけれど、まるでリサ=デラ=カーザのシュトラウスを聴いているような気分にさせられた。言うまでもなく、デラ=カーザは私にとっての理想のマルシャリン(ばらの騎士)であり、アラベラである。ニールンドのシュトラウス・プリマには確かにデラ=カーザのそれに見られるような玉を転がすような銀色の声*2は聴かれない。しかし、奥から滑らかでしっとりとした品格のある声を充てられるニールンドのプリマには、デラ=カーザのそれと同様の若々しい高貴さが聴かれる。それは例えばマドレーヌ(カプリッチョ)やアラベラで、納得のいく役作りを見せてくれる要因となっているのだろう。

 ニールンドの強みは、それに加えて声量が十分すぎるくらいあるところだろう。例えば皇后(影のない女)で要求される、若々しさとドラマティックさを両立できるのは、ニールンドの強みと言ってもよいだろう。今もティーレマン指揮で、ウィーン国立歌劇場の《影のない女》のストリーミングを見ているところだが、彼女の皇后役はその奥の深さと自由自在に変えられる線の細さもあって、本当に素晴らしい。

 そういうわけで、ニールンドはシュトラウス・プリマに関しては向かうところ敵なしのように感じてしまう。アラベラ、マドレーヌ(カプリッチョ)、皇后(影のない女)…のいずれにしても、その役柄が似合いすぎているのである。ぜひ生の舞台を見てみたいソプラノのひとりである。

 

 いまだに夜型を改善できずにはいるが、今日こそ早く寝て、明日から早起きして、規則正しく生活していけたらと思う。そうでもしないと、勉強と趣味のバランスが取れなくなってしまいそうである(もう取れていないという説もある)。今日はだいぶ起きるのが遅くなってしまったので、明日からは改善していかなくてはいけない。今日はこれにて失礼したいと思う。

 

R. シュトラウス雑感

 最近はレポートやストリーミングに追われ、なかなかブログを更新できずにいた。オンライン講義になってから、やけに課題が多くなったように感じるが、仕方ないだろう。ストリーミングを見ている以外は、ほとんど課題に費やしていた今日この頃である。

 しかし、そんな中で音楽を聴けることこそ、家にいることの最大の魅力であり、昨日は1日10時間の《ばらの騎士》鑑賞を敢行してしまった。といってもほとんどレポートをしながらということではあるけれど。朝起きてショルティ指揮、ウィーンフィル盤を聴き、ちょうど聴いているときに届いたカイルベルト指揮、バイエルン国立歌劇場ライブを聴き、最後はクライバー指揮、ウィーン国立歌劇場の映像を垂れ流した。そして昨日はウィーン国立歌劇場の《サロメ》のストリーミングで〆た。

 ウィーンのストリーミングの《サロメ》はなかなかよかった。ボーダーはオケをぐいぐい引っ張るように緊張感を高め、タイトルロールのリンドストロームはドラマチックながら繊細さも見せた。久しぶりに《サロメ》を聴いたが、やはりR. シュトラウスの音楽は舞台との結びつきが極めて強く、情景描写の秀逸さには目を見張るものがあった。ストリーミングの前に昨日のタスクをすべてこなしていなかったら、きっと私は今も昨日のタスクをしているだろう。それぐらい、ぐんぐんその世界に引き込まれるような音楽だった。(最後ティンパニが落ちたけれど)

www.hmv.co.jp

  そして今はクレメンス=クラウス指揮、ウィーンフィルで《サロメ》を聴いている。確かに有名な《七つのヴェールの踊り》で音楽が弛緩してしまったという批判もアルマ=マーラーなどからあった*1ようだが、それでも緊張感の漂う音楽づくりにひたすら驚かされる。彼は交響詩は《英雄の生涯》を最後にオペラの分野へと進出することになるが、彼のオペラでの情景描写には交響詩を思わせる要素がふんだんに詰まっているように思われる。

 

 さて、何を書こうとしたか忘れてしまった。しかも眠い。最近は何もかもオンラインになってしまうし、部活で泳ぐこともできないしで、疲れはたまるばかりである。なら運動しろという話だが、なかなかその気力もない。昼ご飯の買い出しついでに近所を散歩し、太陽にあたることは心がけているのだが…。

 

 思い出した。R. シュトラウスに何ではまってしまったのだろう…。もともとは《ばらの騎士》ぐらいしか聴いたことはなかったのだが、気づけばレパートリーが広がり、《アラベラ》《サロメ》《エレクトラ》《影のない女》など、どんどん聴くようになった。何なら《アラベラ》以外は巨大なオケ編成でドラマチックなオペラである。ワーグナーもろくに聴かないのに、何でこんな作品を聴いているのか、全く不思議な話である。《アラベラ》もしばらく自分の中で忘れ去られていた作品で、この間ウィーン国立歌劇場のストリーミングで久しぶりに聴いた。なかなかこの作品もはまっていきそうである。特に《ばらの騎士》に似ている部分も感じられるし…。*2

 クラシック音楽を聴き始めたころはヨハン=シュトラウスばかり聴いていた。そこからオペラにはまったが、イタリア・オペラ中心だった。フランスものに入って《カルメン》や《ウェルテル》を知った。でも、R. シュトラウスなどのドイツ・オペラはなかなか聴かなかった。それがふとウィーンで《ばらの騎士》を見たことにより、《ばらの騎士》からではあるけれど、R. シュトラウスを聴くようになった。やはりそれはきっかけがあって、R. シュトラウスのオペラを「実際に見た」という要素が強いのだと思う。実際に舞台を見ながらシュトラウスの音楽を聴き、その音楽的なつくりに無意識的に納得させられた面が強いのかもしれない。それは、やはり彼の情景描写によるところだと思う。無意識のうちに聴いているオクタヴィアンやマルシャリンの音型、銀のばらの献呈のシーンでのfff→ppなど…。それが《サロメ》《エレクトラ》など、そしてそれらとは全く違った感じに一見思われる《ばらの騎士》でも、効果を果たしているのではないかと今なら思える(むろん、聴いているときは全く気付かなかったことではあるけれど)。

ここだけの話、実際に《ばらの騎士》を現地で聴くまでは、次の日のドミンゴ主演のヴェルディの《シモン=ボッカネグラ》のほうがよほど楽しみだった。

 最近《ばらの騎士》は毎日のように聴いているが、おそらくR. シュトラウスの音楽にも、ヨハン=シュトラウスと同様にかなり深い沼があるに違いない。さて、今日はどの《ばらの騎士》を聴こうか…などと今朝も思ってしまった。朝起きると《ばらの騎士》を聴きたくなるのは、絶対に第1幕前奏曲の後の爽やかな朝の情景を音楽とともに思い浮かべるからだと思う(笑)。

 

 今日もまとまりのない雑感を投下してしまった感じがするが、そろそろレポート課題に戻るので、この辺で失礼したいと思う。今日のウィーン国立歌劇場のストリーミングは《トリスタンとイゾルデ》なのである。早く終わらせてしまわないと、聴く暇がなくなってしまう…。

ワーグナー雑感と期待の女性歌手

 最近よく寝ているはずなのだが、寝起きが洒落にならないほど悪い。なんでだろうと考えていたら、夜型人間になってしまったことが関係しているらしい。そう思って、昨日の夜は21時に寝た。モーツァルトを聴きながら寝たので、すんなりと落ちることができたようだ。今朝は早起きしてドイツ語の長文を読む予定だったが、結局起きたら8時だった。10時からオンラインでドイツ語の勉強会をするので、その予習を慌ててやり、オンライン勉強会を経て、午後から大学のオンライン授業を受けている。

 

 今朝起きてワーグナーの誕生日だと知った。だから何だ、という話なのだが…。私にとってワーグナーというのは、オペラをよく聴くわりに極めて疎い存在で、今まで《トリスタンとイゾルデ》《ローエングリン》ぐらいしかまともに聴いたオペラはない。でも、ワーグナーの存在が他の作曲家に与えた影響は極めて大きいのは間違いなく、その存在を尊重するためにも、今は《トリスタンとイゾルデ》を聴いている。

 とはいえ、《トリスタンとイゾルデ》というオペラも、ウェルザー=メストがいなければ、永遠に聴くこともなさそうだった作品である。もちろん、第1幕前奏曲や第3幕《愛の死》などは単独で取り上げられることも多いので、聴きなれた作品ではあるのだが、全曲聴くことによって新たな発見や感覚もあるに違いないと思って、ウィーン国立歌劇場150周年記念ボックス(22CD)の中にあったウェルザー=メスト指揮、2013年ライブを聴くことにした。

  このウェルザー=メスト盤は、後に聴いた有名なクライバー盤よりも好きになった。ある程度ワーグナーに対する偏見(長い、うるさい…など)は払拭されたような気はするが、それでもあまりすすんで聴くオペラではなく、今でも聴く頻度は高くない。何なら《ローエングリン》にいたっては、初めて聴いて以来、1回も聴いていない気がする。

 特にヴェルディの最後のほうのオペラー最も顕著なのが《オテロ》らしいーを聴くと、ワーグナーの影響を感じるとおっしゃる知り合いも多い。私も《オテロ》は何度も聴いているが、ワーグナーに疎すぎるので、あまりよくわからない。ただ、4月に《ワルキューレ》第1幕のオンライン講義に参加させていただいて、ライトモチーフという概念を知ったので、何となくそれが使われているらしいことはわかる気がする(ヴェルディ後期の作品ー《アイーダ》《オテロ》などーにはライトモチーフが使われている*1*2)。

  

 

 さて、ここで話を変えるが、ウィーン国立歌劇場のストリーミングが怒涛のモーツァルトとなる。今日22日の《ドン・ジョヴァンニ》で始まり、23日は《イドメネオ》、25日は《魔笛》、26日に再び《ドン・ジョヴァンニ》、30日にまた《ドン・ジョヴァンニ》、31日が《フィガロの結婚》という具合だ。また、R. シュトラウスも24日に《アラベラ》、28日が《サロメ》、6月1日が再び《アラベラ》という感じで抜け目ない。ここ10日ほどのいちばんの楽しみは《アラベラ》なのだが、他にも25日の《魔笛》のパミーナがオルガ=ベスメルトナ、夜の女王がヒーラ=ファヒマという大好きなソプラノふたりだし、6月1日の《アラベラ》もチェン=レイス、ステファニー=ホウツェールという大好きな女声だし(ウィーンで聴いた《ばらの騎士》でそれぞれゾフィーとオクタヴィアンを歌っていた)で、歌手に注目しても楽しみは尽きない。

 ベスメルトナはふくよかで奥行きのある美声が持ち味で、個人的には伯爵夫人(フィガロの結婚)やタチアーナ(エフゲニー=オネーギン)での性格付けが魅力的だと感じたので、今回のパミーナも非常に楽しみである。ファヒマはウィーン国立歌劇場150周年ボックスの《仮面舞踏会》で知ったコロラトゥーラで、オスカル(仮面舞踏会)での発音と初々しさには目を見張るものがあった。後にムゼッタ(ボエーム)も聴いたが、こちらもとてもよかった。

 レイスは本当に素晴らしいソプラノで、彼女のゾフィーは私が聴く限り、最近ではいちばんではないだろうかとも思う。線が細く、しなやかさと上品さを備えた美声。感情表現にも卓越していた。今回のズデンカも楽しみである。ホウツェールのオクタヴィアンも太くしっかりした歌声ではあるが、感情的になる部分での線の細さ、重心はしっかりしているけれど伸びやかな高音と充実した中音域によって、凛々しさを感じさせる役作りは素直に素晴らしかった。今回はアデライーデ役。ズボン役で主に見てきたメゾなので、女性役で見るのが楽しみである。この日のアラベラはカミッラ=ニールンドでそちらに注目して観ることになるかもしれないが、このふたりにもぜひ注目してほしい。

 

 ワーグナーについての雑感や今後のストリーミングで楽しみな歌手をいろいろ話したところで、今日は失礼しようと思う。今回取り上げた4人の女性歌手については、かつて #日めくりオペラ歌手 で取り上げていると思うので、そちらも参考にされたい。また、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》はウィーン国立歌劇場から29日に配信される。こちらもぜひ鑑賞したいと思う。