だんだんと気温も上がり、夏らしくなってきた。今朝は早く起き(というより寝られなかった)、朝はヨーゼフ=ランナーの作品集を2つの盤で、アンサンブルで聴いた。この作曲家はウィンナ・ワルツ作曲家の中ではいかんせん知名度があまり高くないのだが、弦の流れるようなフレーズが美しく、気品があり、アンサンブルにすると大変映える作品が多い。今朝は、そんなランナーの作品を、ウィーン・ランナー・アンサンブルとウィーン交響楽団のメンバーによるシュトラウス・アンサンブルのふたつのアンサンブルで聴いた。
そしてランナーのワルツを聴きながらドイツ語を読んだ後、久しぶりに目の前の海浜公園に自転車で行き、日光浴をした。太陽光を意識して浴びたのは久しぶりで、ポカポカとして気持ちよかった。その後は近所のドイツ・パンの店でイートインし、午前中はゆっくり過ごした。(コーヒーを飲みすぎて、おなか緩くなった)
そんなときに、今日のウィーン国立歌劇場のストリーミングは《アドリアーナ=ルクヴルール》であると知った。チレアによる美しいオペラである。2014年の公演で、タイトルロールにアンジェラ=ゲオルギュー、マウリツィオ役にマッシモ=ジョルダーノという配役。しかし、忘れてはならない。ブイヨン公妃役がエレーナ=ツィトーコワという、推しのメゾソプラノのひとりなのである。
というわけで、今日のブログでは彼女を紹介したい。
エレーナ=ツィトコーワ(1972‐、ロシア)
私がこのメゾソプラノを知ったのはそれこそウィーン国立歌劇場のストリーミングでかつてあったヴェルディの《ドン・カルロ》のエボリ役で、その迫力満点の歌唱にはひたすら驚かされたものである。彼女の魅力は、やはり声の勢いと声量に頼りすぎない、余裕を持った発声にあると思う。直線的であまりビブラートがかからない、突き抜けるような声で、それはそれはエボリ向きな声だと少し聴いただけで分かるほどの、とても魅力的なメゾソプラノである。しかし、ただ突き抜けるだけではなく、輪郭に絶妙な柔らかさを持った、気品のある声。彼女の声は今回のブイヨン公妃(アドリアーナ=ルクヴルール)やエボリ(ドン・カルロ)のような高貴な役は勿論、ケルビーノ(フィガロの結婚)やオクタヴィアン(ばらの騎士)のようなズボン役にぴったりだと思う。
そのレパートリーはヴェルディだけにとどまらず、今回のブイヨン公妃(アドリアーナ=ルクヴルール)など他のイタリア・オペラやシャルロッテ(ウェルテル)などのフランスもの、ケルビーノ(フィガロの結婚)やドラベッラ(コジ・ファン・トゥッテ)などモーツァルト、オルトルート(ローエングリン)やブランゲーネ(トリスタンとイゾルデ)などのワーグナー、オクタヴィアン(ばらの騎士)、さらには外国の王女(ルサルカ)、オリガ(エフゲニー=オネーギン)にいたるまで、幅広く歌うことができるのも魅力である。*2
このメゾソプラノは今のうちにぜひ聴いていただきたい歌手のひとりである。少し聴いていただきたいので、前回と同様に、動画を紹介したい。
マスネ:歌劇《ウェルテル》第3幕より シャルロッテのアリア《ウェルテル!私の心にウェルテルがいると誰が想像できたかしら》
アグネス=バルツァに似た雰囲気を感じさせる声かもしれない。ふと思っただけなので、後から別の感想を抱くかもしれないが…。
ツィトコーワの次のウィーン国立歌劇場への登場は2021年1月のドヴォルザークの《ルサルカ》の外国の王女役である。この公演もまたキャストが非常に豪華で、ルサルカにクリスティーネ=オポライス、王子役に、この役を当たり役のひとつとしている宮廷歌手ピョートル=ベチャワが登場する。特にベチャワの王子役については、ウェルザー=メスト指揮、クリーブランド管、ザルツブルク音楽祭2008年ライブの公演で、その役との相性の良さが伺える。*3
意外とツィトコーワを推せたところで、今日の歌手紹介を終えたいと思う。図らずも2日連続でロシアのオペラ歌手になった。Twitterでもお話しした通り、この #今聴きたい歌手50選に関しては、若手を基本的に紹介しつつ、ところどころ、現在脂の乗っている推しの歌手を挟んでいきたいと考えている。今回のツィトコーワも、現在乗りに乗っている、私の推しの歌手だと思っていただきたい。
それでは今日はこの辺で失礼したいと思う。
*6月12日追記(訂正)
Twitterのフォロワー様よりご指摘いただき、確認したところ、以下の誤りがありましたので、該当箇所をすべて訂正いたしました。申し訳ございませんでした。
(誤)「ツィトーコワ」
(正)「ツィトコーワ」