Eine wienerische Maskerad' - und weiter nichts?

Oper, Wiener Walzer, ein bisschen Symphonie, usw.

#今聴きたい歌手50選 第4回 ~ヒーラ=ファヒマ~

 ついに梅雨入りし、じめじめと蒸し暑い天気が続く季節になった。今夜は近所の行きつけのラーメン屋にラーメンを食べに行って、ついでにコンビニで久々にビールを買って、今飲んでいる。この一連の散歩だけで汗が滲むような季節なのである。夏はもうすぐそこだ。ただ、泳ぐ機会がない以上、夏が来たという実感は全くない。家でストリーミングを観ながら紅茶を飲み、レポートをするだけの生活では、季節感がないのは当たり前といえばそれまでかもしれない。

 さて、今はというと先日購入したCDを聴いている。サヴァリッシュ指揮、バイエルン国立歌劇場1978年ライブのモーツァルト:《コジ・ファン・トゥッテ》である。なかなか配役は豪華で、マーガレット=プライスのフィオルディリージ、ファスベンダーのドラベッラ、シュライアーのフェルランド、ブレンデルのグリエルモ、グリストのデスピーナ、そしてアダムのドン・アルフォンソという万全の布陣である。やはりシュライアーはモーツァルトがすごくよく似合うテノールだなあ…なんて思いながら聴いている。

 

 さて、今日も今日とて、オペラ歌手の紹介をしていこうと思う。この歌手を紹介するのは、間違いなく明後日16日のウィーン国立歌劇場の《仮面舞踏会》のストリーミングを意識したものであり、この公演のCDを好んで聴いている自分としては、この《仮面舞踏会》のストリーミングはぜひ皆様に聴いていただきたい、観ていただきたいものなのだ。

 

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ヒーラ=ファヒマ(夜の女王、魔笛)。ウィーン国立歌劇場(2017年12月)。*1

 ヒーラ=ファヒマ(1987-、イスラエル

 私の推しのコロラトゥーラ・ソプラノである。もうTwitterでは何度も取り上げているし、ブログで取り上げたこともあると思うので、名前だけでも聞いたことある方も多いはずだ。ウィーン国立歌劇場を中心に活躍している、気鋭のコロラトゥーラである。ガリフッリーナのような硬く絞られるような声ではなく、どちらかというと平たい感じの、柔らかく暖かみのある声だと思う。音を完璧に余裕を持って当てていく。決して声量があるというわけではないが、聴いたらすぐにそれとわかる独特な声。少なめのビブラート(決してないわけではない)を使い、声を微妙に揺らす。オブラートに包まれたような品のある、落ち着きを持った歌声だが、発音は明晰で、何を言っているかわからないなどということはない。今聴いているグリストの声にほのかに柔らかさを与えるようなイメージだろうか。(とにかく言ってしまえば声が可愛いのである(蛇足)。)

 そんな彼女の当たり役はムゼッタ(ボエーム)やオスカル(仮面舞踏会)、ナンネッタ(ファルスタッフ)、フィアカーミリ(アラベラ)、ツェルビネッタ(ナクソス島のアリアドネ)、ソフィー(ウェルテル)といったところだろうか。夜の女王(魔笛)も聴いたが、彼女の柔らかな声は少しイメージとは異なっている気がした。あどけなさ、いじらしさ、そして可憐さ…そういったものが似つかわしい役がどちらかというと彼女には似合っていると思う。中でもオスカル(仮面舞踏会)は、ウィーン国立歌劇場150周年記念ボックスに含まれていた《仮面舞踏会》のCD(実はこの公演こそ明後日16日のストリーミングで公開される映像なのだ)で何度も聴き、その小姓としてのあどけなさを前面に出した歌唱は随一のものだった。《仮面舞踏会》は私のお気に入りのヴェルディのオペラのひとつだが、なかなかオスカルはこれという人がいなかった。あえて選ぶならグリストかなというところにこのCDを聴いた。私はオスカルの第1声 "S'avanza il re" を聴いた瞬間にこのコロラトゥーラに惚れた。以降、ファヒマのオスカルは何度も聴いたが、すぐに本人だと分かる声だし、どんどん彼女の歌声に夢中になった。私が今いちばん聴きたい歌手のひとりだ。

 彼女の歌声は可憐だが仄かな陰影があり、柔らかく暖かみがある。一度聴いたら忘れられなくなるような美しい声(と姿)である。ぜひ皆様にも聴いていただきたい。

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 プッチーニ:歌劇《ボエーム》第2幕よりムゼッタのアリア《私が街を歩けば》(ムゼッタのワルツ)

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 ヴェルディ:歌劇《ファルスタッフ》第3幕より ナンネッタのアリア《季節風の息に乗って》

 彼女の声を聴いているとますます、彼女にはぜひゾフィーばらの騎士)を歌ってほしいなあ…なんて思ってしまう。ファヒマのレパートリーは同じく期待の若手である、エリン=モーリーやダニエラ=ファリーと被っているところが多いし…是非機会があれば聴いてみたいものだ。

 ファヒマはウィーン国立歌劇場の16日のヴェルディ:《仮面舞踏会》のストリーミングで、先に書いたオスカルを聴くことができる。また、ウィーン国立歌劇場のコンサートシリーズ(ライブ)にも勿論登場、20日、25日、28日(いずれも午前2時30分から)にその美声を披露してくれる。そして、7月1日はウィーン国立歌劇場から《ファルスタッフ》が配信され、彼女のナンネッタを聴くことができる。*2

 やはり最近いちばんの推しの歌手となると長くなってしまった。ぜひぜひ、皆様にも聴いていただきたい。そして、感想をぜひ伺いたいと思う。まずは16日のウィーン国立歌劇場の《仮面舞踏会》から。

 

ウィーン国立歌劇場のストリーミングはこちらから入れます。アカウントの作成をすれば、今は無料で見られます。

Wiener Staatsoper


 それでは今日はこの辺で。