Eine wienerische Maskerad' - und weiter nichts?

Oper, Wiener Walzer, ein bisschen Symphonie, usw.

#今聴きたい歌手50選 第9回 ~オルガ=ベスメルトナ~

 この夏の計画を立てている。この夏は勉強を頑張ることにした。勉強といってもオペラの勉強ではなく、大学の専攻科目の勉強である。今のところ、生態学、植物生理学、進化遺伝学といった方面に興味があり、そちらの方面に進んでいきたいなと思っている。この夏にできる限り知識を吸収して、研究室配属や大学院入試に向けて、その足掛かりを整えておきたいところである。

 もちろんせっかく伸ばしたドイツ語や音楽に関する知識は維持していかないといけない。専攻科目をメインにしつつ、これらも計画的に組み込む必要がある。来年の夏、大学院入試の後にウィーンに飛んで、ジョルダンを聴くことを画策しているのだが、お金もまだまだ足りない。今のうちに精一杯稼いでおかなくてはならないので、当然バイトもかなり力を入れる。この夏はかなり忙しくなりそうだが、その合間にコンサートに行って気分転換をしつつ、できるだけ高いパフォーマンスを発揮できるように、計画はぜひ大事にしていきたい。

 

 さて、そんな中でも最近の歌手の紹介を続けていきたい。今日は私の大好きなスピント・ソプラノを紹介したいと思う。最近いちばん推している歌手のひとりである。

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オルガ=ベスメルトナ(ウィーン国立歌劇場150周年記念コンサートマチネ)。2019年5月。*1

 オルガ=ベスメルトナ(1983-、ウクライナ

 2011年のウィーン国立歌劇場のNeue Stimmenに登場し、2012年からウィーン国立歌劇場のアンサンブルメンバーとして、ウィーン国立歌劇場で活躍するようになったソプラノ。*2 リリックな役からスピント系の役まで幅広く歌える。彼女がウィーン国立歌劇場でとりわけ成功した役が2012年のアルマヴィーヴァ伯爵夫人(フィガロの結婚)であり、以降20回ウィーンでこの役を歌うまでになった。他にも2013年から2017年まで歌ったパミーナ(魔笛)や2015年から2018年にかけて歌ったドンナ・エルヴィーラ(ドン・ジョヴァンニ)、2017年と2018年に歌ったタチアーナ(エフゲニー・オネーギン)などの当たり役がある。2014年にはルサルカ、2016年にはリュー(トゥーランドット)、2017年にはデスデモーナ(オテロ)、2019年にはミミ(ボエーム)がレパートリーに加わった。年を経るごとにレパートリーを拡大し続けている、気鋭のソプラノである。*3

 私が初めて彼女の歌声を聴いたのは2018年10月の《エフゲニー・オネーギン》で、その落ち着きと気品のある声にまず惹かれた。タチアーナは第2幕までと第3幕ではその表現を変える必要がある難役だと私は思うのだが、彼女は第1幕の手紙の場に見られるような夢見がちな心を弾ませる少女のような表現と、第3幕で見られるような夫人となって落ち着きと気品を持った表現の対比がとりわけ魅力的だった。このタチアーナで彼女を知ったし、この作品を知ることができた。それ以降、できる限り彼女の歌声を聴きたいと思うようになった。

 このコロナ禍でのウィーン国立歌劇場のストリーミングでも、ベスメルトナは何度も登場した。2017年の《魔笛》でのパミーナの歌唱もなかなか素晴らしかったし、2019年の《ダントンの死》でのリュシールも本当に素晴らしかった。前者ではタチアーナ(エフゲニー・オネーギン)でいうところの第2幕までの少女のような表現が、後者では若くも気品のある美しさを備えた歌唱が本当に魅力的だった。

 しかし、ベスメルトナの魅力はアルマヴィーヴァ伯爵夫人(フィガロの結婚)を抜きには語れるものではない。彼女のアルマヴィーヴァ伯爵夫人は、持ち前の奥行きのあるふくよかな声と奥ゆかしさのある気品に満ちている。第3幕の "Dove sono" は私のいちばん好きなモーツァルトのアリアのひとつだが、芯のあるけれど丸みを帯びている彼女の声には、情感あふれるものがある。中でも絞り出すような線の細い高音や奥からの発生が特徴的なピアノが、その感情表現には一役買っている。全体としてはクリアで澄んだ美声だが、程よくビブラートを使い、それに包むように芯のある安定感のある歌唱をするので、フォルテでもとても柔らかく聞こえ、そこには上品さを存分に感じられるのである。

 ベスメルトナはアルマヴィーヴァ伯爵夫人でウィーン国立歌劇場で主役級を歌うようになり、評価されるようになった。彼女はこの役に自信を持っているのか、 "Dove sono" を歌う機会が多く、ウィーン国立歌劇場150周年記念のコンサートマチネでもガラコンサートでもこのアリアを披露している。*4 また、先日はウィーン国立歌劇場のストリーミング「若手歌手のガラコンサート」でもこのアリアと《フィガロの結婚》第2幕のアンサンブルフィナーレを歌い、その安定感のある伯爵夫人を聴かせてくれた。*5

 彼女が伯爵夫人を歌っている動画があるので、是非紹介したいと思う。まずは彼女の2011年のNeue Stimmenでの歌唱を。

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 そして、2014年のウィーン国立歌劇場での公演はこちら。

youtu.be

 

 今後が非常に期待できるソプラノなので、これからもその活躍を見守っていきたいと思う。そして近いうちに絶対に生で聴いておきたいソプラノ、できれば彼女のアルマヴィーヴァ伯爵夫人をウィーン国立歌劇場で聴いてみたい。

 

 それでは長くなってしまったのでこの辺で。