Eine wienerische Maskerad' - und weiter nichts?

Oper, Wiener Walzer, ein bisschen Symphonie, usw.

#今聴きたい歌手50選 第6回 ~アンドレア=キャロル~

 今日は課題の多い日だった。来週のレポートを早々に完成させるべく悪戦苦闘しながらも、意外と早く終わり、安心してウィーン国立歌劇場のストリーミング「若手歌手のガラコンサート」を見ることができた。これを見ることは、私がまだまだ知らない期待の若手を知るためのきっかけであり、このコンサートは本当に興味深く、楽しいものだった。今まで知っていた歌手も知らない面を見いだせたり、知らない歌手の中にもひとめぼれではないけれど、今日聴いただけで惚れてしまったような歌手ももちろんいる。これから紹介していくのが楽しみである。

 そして今は、聞き逃さずに済んだウィーン国立歌劇場の《ドン・カルロ》のストリーミングを観ている。アルミリアートの指揮、カルロは先日に引き続きヴァルガス、ロドリーゴはテジエ、エリザベッタはハルテロス、エボリはウリア=モンゾン、フィリッポはパーペである。テジエのロドリーゴがとりわけ楽しみだ。

 

 今日もまた、私が今聴いておきたい歌手の紹介をさせていただく。これからが期待の歌手。今まで紹介した中で最も若い歌手である。

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アンドレア=キャロル(スザンナ、フィガロの結婚)。ウィーン国立歌劇場(2017年9月)。*1

  アンドレア=キャロル(1990‐、アメリカ)

 アメリカの若手ソプラノ、これまでヒューストンのグランド・オペラで活躍してきたほか、2015/16シーズンよりウィーン国立歌劇場のアンサンブルメンバーに加入、以降はウィーンを拠点に歌っている。*2初めはツェルリーナ(ドン・ジョヴァンニ)や天からの声(ドン・カルロ)などのわき役を中心に歌っていたが(ただ、ノリーナ(ドン・パスクワーレ)は2016年から歌っている)、2017/18シーズンにスザンナ(フィガロの結婚)、アディーナ(愛の妙薬)を立て続けに歌ってからは、主に主役での活躍が多くなっている気鋭のソプラノである。*3主にコミカルな役を演じることが多く、その若々しい歌唱はウィーンの新しい花として活躍してくれるのではないかと、今後がすごく楽しみになるような歌唱だと私は考えている。

 彼女の持ち味はふくよかながら透き通るような美声である。もともと線は細めだが、彼女のブレスコントロールの技術から、声の細さを自在に変えられる。もともとの細い声を生かせるのがジルダ(リゴレット)のような役であり、彼女自身この役を昨年5月にウィーンでも歌っている。*4可憐さと繊細さ、悲劇性などを加えた難役ではあるが、キャロルの性格付け、演技力からするとこの役はかなり似合うのではないかと推測している。

 だが、やはり私が非常に期待している彼女の役柄はスザンナ(フィガロの結婚)なのである。スザンナのようなコミカルな役は、彼女の声の軽さ、舞台上でのフットワークの軽さもあって、特徴に最もあった役なのではないだろうか。前述のとおり、彼女が大きな役でウィーンの聴衆を前に歌いだしたのは2016年のノリーナであったが、新星の主役ソプラノとして軌道に乗り始めたのは2017年のスザンナだと考えられる。私は実際にこのコロナ禍で聴いたウィーン国立歌劇場の《フィガロの結婚》のストリーミングで彼女の声に初めて触れることになったが、その張りのある若々しさとエネルギー、喜劇的な演技力、そして突き抜けるような笑い声や絶妙な声の浮かしなどのアクセントが秀逸だったイメージが残っている。確かに私の理想のスザンナ、コトルバスやギューデンと比べるといくぶん線は太く、陰影も薄いため、初めは声の特徴をうまく生かして役作りをしている印象はあまりなかったのだが、公演が進んでいくうちにどんどん調子が上がり、持ち前の上向きで明るい声と先に述べたようなアクセントをうまく組み合わせて、また舞台上での演技をも絡めながら、徐々に素朴だけれど決して存在感を失わないスザンナを作り上げていたのが非常に好印象だった。味付けをしすぎることはなく、カルロス=アルバレスの伯爵やレシュマンの伯爵夫人といった大物に囲まれながらも、自らの歌声で、演技で、そして性格付けでその存在を知らしめていたので、私の中に彼女の名前は忘れずに刻まれたのである。ちなみに当時私が知っていた中で最も若い歌手だった。

 

 本当はもうひとり紹介したかったのだが、意外と長く語ってしまったので、今日はひとりだけ。今日のようなガラコンサートで若手歌手を知る機会があるのはうれしいことだし、今日覚えた歌手を検索しまくって、今後聴くときに参考にしていきたい。

 とはいえ、ウィーン国立歌劇場のストリーミングも7月1日で終わってしまう。ストリーミングで知った歌手も多いし、生の声を切実に聴きたくなってきている。特にこれからが楽しみな20代、30代の歌手に関しては機会あるたびに何度も聴いていきたいと思っている。

 

 今後の楽しみ(ウィーン国立歌劇場のストリーミング)は何と言っても30日の《リゴレット》。フローレスマントヴァ侯爵にペレチャッコのジルダ、カルロス=アルバレスのタイトルロール。この公演は一度どこかで見たが、かなり素晴らしかった。指揮はピド。

 そして、7月1日は《ファルスタッフ》。マエストリのタイトルロールが楽しみで仕方がない。推しのコロラトゥーラ、ファヒマは当たり役のナンネッタで登場。巨匠メータの指揮を存分に堪能したい。

 

 それでは今日はこの辺で。